アラスカでの探検や生活について書いた短編集。品がいい。品がいい文章とはどんな文章か?読み手の気が落ち着いてないと味わえない、難しいことは書いてないけど、しっかり噛み砕いて味わいたい文章じゃないだろうか。
ナイーブで叙情的でやや甘い気もする。だけど幸か不幸か、著者がアラスカの自然の中でクマに襲われて死んでしまった事実がスパイスになってしまっている。「早春」の章でこう書いていて目が留まった。
『もしこの土地からクマが消え、野営の夜、何も恐れずに眠ることができたなら、それは何とつまらぬ自然なのだろう。』
ここで言う「クマ」や「自然」は何かの比喩のようにも読める。「何も恐れずに眠ることができたなら、それは何とつまらぬ人生なのだろう」みたいに。読み手によって様々な解釈ができるのはいい文章の条件だと思う。
圧倒的な星空や夕焼けの美しさ、それを見た時の気持ちを愛する人にどんなふうに伝えればいい?という問いについてこう書いている。
『その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって・・・その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって』
ナイーブで抒情的。甘さで流されそうになるギリギリ。しかし、ここで著者が書いている美しさは、凡庸な日常の中でも得られるのだろうか?今日は夕焼けがキレイだなー、というレベルの話ではなく、苦難苦闘の末に辿り着いた、極寒の切り立った氷崖のような、死と隣り合わせの危険な場所でなければ感じることができないのではないか?そう考えると甘くない。なにも北極やジャングルの奥地である必要はない。なにかの死闘の末に辿り着いた先で観た景色でもいい。命がけでやり切った先で観た景色。私はそんな景色を見たことがあるだろうか?それを見ていないから、私は変われないのかもしれない。
ナイーブで叙情的でやや甘い気もする。だけど幸か不幸か、著者がアラスカの自然の中でクマに襲われて死んでしまった事実がスパイスになってしまっている。「早春」の章でこう書いていて目が留まった。
『もしこの土地からクマが消え、野営の夜、何も恐れずに眠ることができたなら、それは何とつまらぬ自然なのだろう。』
ここで言う「クマ」や「自然」は何かの比喩のようにも読める。「何も恐れずに眠ることができたなら、それは何とつまらぬ人生なのだろう」みたいに。読み手によって様々な解釈ができるのはいい文章の条件だと思う。
圧倒的な星空や夕焼けの美しさ、それを見た時の気持ちを愛する人にどんなふうに伝えればいい?という問いについてこう書いている。
『その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって・・・その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって』
ナイーブで抒情的。甘さで流されそうになるギリギリ。しかし、ここで著者が書いている美しさは、凡庸な日常の中でも得られるのだろうか?今日は夕焼けがキレイだなー、というレベルの話ではなく、苦難苦闘の末に辿り着いた、極寒の切り立った氷崖のような、死と隣り合わせの危険な場所でなければ感じることができないのではないか?そう考えると甘くない。なにも北極やジャングルの奥地である必要はない。なにかの死闘の末に辿り着いた先で観た景色でもいい。命がけでやり切った先で観た景色。私はそんな景色を見たことがあるだろうか?それを見ていないから、私は変われないのかもしれない。