昔読んだ村上春樹の小説「神の子どもたちはみな踊る」でこの本の表題作「火を熾す」のことが触れられていて、なんとなく頭の片隅に引っかかっていたので読んでみた短編集。翻訳モノは苦手なんだけど、この本は比較的スイスイと読むことができた。とはいえ、よくわからない話が2つあったのも事実。
ハードボイルドと言っていいのだろうか。勝つこと、負けることの冷酷さ、非情さを簡潔な鍛えられた文体で書いた短編が多い。表題作では、極寒の地で火を熾せなかったらオレは死ぬ!という状況の男を描いている。その男には予期せぬトホホなアクシデントが起きるんだけど、その描写がリアルでシリアスで残酷。しかし、これはもしかしてコントなのでは?。最後に収められた、弱った狼との戦いに勝った男の短編も壮絶さと共におかしみが漂う。真剣にやっているのに、傍から見るとコントになってしまうことは時々ある。それが余計に悲しい。
ストイックな2人の男の勝ち負けを星新一っぽく描いた短編や、二重人格(?)の男が戦う短編には、こんなSF的な話も書けるのか!という驚きがあった。また、ボクシングについて描いた短編が2つあって、どちらも強く印象に残った。負けて悲痛なのはもちろん、勝っても悲痛などうしようもなさ、救いのなさに、ああ・・・どうしようもないなあ・・・という気持ちになる。
これらの短編の冷酷でリアルな描写には、勝ち負けを切り裂く溶けない氷のナイフような鮮烈さがある。この感じはどこかで味わったような気がする。肉に食い込んでいないだろうか、溶けない氷の欠片が。それはもう皮膚の下に埋もれて痛みはないかもしれない。でも、どんなボンヤリした人生にも、人から見たら取るに足らないトゲのようなものかもしれないけど、そんな欠片があると思う。。。などと、「氷のナイフ」なんて比喩で感想を書かせてしまう一冊。
ハードボイルドと言っていいのだろうか。勝つこと、負けることの冷酷さ、非情さを簡潔な鍛えられた文体で書いた短編が多い。表題作では、極寒の地で火を熾せなかったらオレは死ぬ!という状況の男を描いている。その男には予期せぬトホホなアクシデントが起きるんだけど、その描写がリアルでシリアスで残酷。しかし、これはもしかしてコントなのでは?。最後に収められた、弱った狼との戦いに勝った男の短編も壮絶さと共におかしみが漂う。真剣にやっているのに、傍から見るとコントになってしまうことは時々ある。それが余計に悲しい。
ストイックな2人の男の勝ち負けを星新一っぽく描いた短編や、二重人格(?)の男が戦う短編には、こんなSF的な話も書けるのか!という驚きがあった。また、ボクシングについて描いた短編が2つあって、どちらも強く印象に残った。負けて悲痛なのはもちろん、勝っても悲痛などうしようもなさ、救いのなさに、ああ・・・どうしようもないなあ・・・という気持ちになる。
これらの短編の冷酷でリアルな描写には、勝ち負けを切り裂く溶けない氷のナイフような鮮烈さがある。この感じはどこかで味わったような気がする。肉に食い込んでいないだろうか、溶けない氷の欠片が。それはもう皮膚の下に埋もれて痛みはないかもしれない。でも、どんなボンヤリした人生にも、人から見たら取るに足らないトゲのようなものかもしれないけど、そんな欠片があると思う。。。などと、「氷のナイフ」なんて比喩で感想を書かせてしまう一冊。