ジヌよさらば ~かむろば村へ~ [DVD]

松尾スズキ作品ということと、お金が嫌になってド田舎に移住する若者という設定に惹かれて鑑賞。おもしろかった。都市労働やら資本主義やらにうんざりする気持ちがなくはないし、ド田舎で暮らせるかな、みたいな妄想がなくもないので、この設定は自分にマッチしていた。主人公の松田龍平はボンヤリしててヌボーっとしてて覇気がなくて自分みたいで他人とは思えない感じ。

ちょいちょい入れてくる笑いの質が実に松尾スズキらしいと思ったけど、思ったよりストレートに寓話的な話だとも思った。昔何度か松尾スズキの演劇を見たことがあって、エログロダークデンジャラスでひねくれていて、わかりやすい話にまとめることへの照れがある印象だった。年を経て変わったのか、それとも観客への親切か。

時には自分を捨てて人は何かをせずにいられないし、人生は思わぬ望まぬ形でなんとかなるものだ、という話にケチを付けるつもりはない。みうらじゅんさんも「自分を捨てろ」みたいなこと言ってたなあ。原作がどうだったか知らないけど、神様に直接それをしゃべらせるのではなく、もうちょっと別の暗喩的な表現はなかったのか、とも思う。観客に親切な表現なのは間違いけど。神様もうちょっとなんとかならなかったのかなあ。いなくても良かったんじゃないの神様は。いや西田敏行は全然悪くないんだけど。遠野物語的な世界観を実写映画でポップに表現したかったんだろうか。そのへんは演劇で上演できたら松尾スズキの得意技かも。

いや、でもおもしろかった。あと松たか子と旅館のおかみ(中村優子?)がとても魅力的だった。