黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い

読む前に思ったのは、映画「立候補」の裏話的な本かな?ということだったけど作者が違った。マック赤坂についての描写は「立候補」と大きな違いはないように思えた。ただ、ニコニコ生放送で立候補者の公開討論会を企画、放送するなど、作者自身がかなり選挙にコミットしているのが映画「立候補」との大きな違い。そんな関わりもあるせいか、この本では著者の選挙への愛、そして何より立候補者への愛がほとばしっている。それはいわゆる泡沫候補を「無頼系独立候補」と書くところに端的に表れていると思う。冷笑しない。敬意を持つ。なぜなら、彼らは自分にできないことを徒手空拳でやっているから。

しかしやっぱり時に滑稽に映ってしまうのも事実。マック赤坂の章では、声を出して笑う箇所があった。そこでちょっとあきれたりはするけど冷笑はしない。そこがいいと思う。自身も苦しい中でライターを続ける著者は、真摯で滑稽な無頼系独立候補に自分を投影させていたんじゃないだろうか。

自分は何かを、誰かを冷笑していないか?自分にできないことをしている誰かを。戦っている誰かを。いつか、その冷笑は自分自身に跳ね返ってくるのではないか。冷笑してきたからこそ今の政治状況なんじゃないのか。冷笑しなかったからこそ、この本は開高健ノンフィクション賞を受賞できたのではないか。そんなことを考えさせられた。